はじめに
やりたいことがないのは普通?
結論から言うと、「やりたいことがない」のはとても普通で、むしろ多くの人にとって自然な状態です。
そしてこれは決して「ダメなこと」でも「欠けていること」でもありません。むしろ、人間の脳や環境の仕組みを考えると“当然起こる状態”です。
ここでは、心理学・学習科学・行動科学の観点を交えて、丁寧に解説します。
1. 人の脳は「明確な将来像」を自然には作れない
脳科学的には、人は今の感情や環境に強く影響されるため、
未来の自分を具体的にイメージするのが難しいと言われています。
- 今日の気分
- 周囲の期待
- 目の前のタスク
- 過去の経験
こうしたものに左右されるため、「長期的に何がしたいか?」は霧がかかったように見えにくいのが通常です。
▶︎「やりたいことが見えるのは特別な経験をした一部の人だけ」
ほとんどの人は、やってみる → 少し分かる → 興味が育つという順番です。
いきなり“やりたいことが明確”というほうが少数派です。
2. 情報過多と比較社会で「決められない」が生まれやすい
現代は選択肢が多く、SNSでは成功者のストーリーが大量に流れてくる時代。
- あれも良さそう
- これも気になる
- でも自分には合わないかも
- 他の人のレベルが高く見える
こうして「決められない」「選べない」が自然発生します。
▶︎選べないのは、弱さではなく“環境の問題”
迷うのはあなたの能力の問題ではなく、現代の環境が複雑すぎるからです。
3. 「やりたいこと」は行動しながら“形成される”もの
モチベーション科学では、興味は「後から湧くもの」であり、最初から存在しなくていいというのが定説です。
- やってみる
- 達成できる
- 褒められる
- 少し上達する
この小さな積み重ねで「もっとやりたい」と思う回路が育っていきます。
▶︎結論:やってないことに“最初から情熱を持てない”のは普通
人間は「行動 → 興味」の順で動く生き物なのです。
最後に:あなたは「異常」でも「遅れている」わけでもない
やりたいことがない状態は、「これから、可能性を広げられる状態」でもあります。
むしろ、
- 好奇心に柔軟
- 新しい方向に開いている
- 固定された理想に縛られていない
という意味で、とても良い状態です。
やりたいことの見つけ方
多くの人が「やりたいこと」は 思考だけで見つかるもの と思っていますが、実際には
行動・経験・感情のフィードバック を通して見つかることがほとんどです。
以下では、やりたいことを見つける際に役立つ6つの視点を紹介します。
① 興味の種を拾う:小さな好奇心を意識する
やりたいことは、最初から大きな情熱として現れることはほぼありません。
「微妙に気になる」「ちょっと触れてみたい」という小さな種を拾うのが最初のステップです。
具体例
- なぜかYouTubeでそのテーマを見てしまう
- つい文章を読んでしまう分野
- 人に聞かれると語りたくなる話題
👉 興味は“弱い信号”から始まると理解するだけで、発見しやすくなります。
② 快・不快の記録:身体感覚で判断する
やりたいことは、論理よりも身体や感情が先に反応します。
「心が軽くなる/重くなる」「エネルギーが湧く/吸われる」などの感覚を観察します。
ワーク例
1〜2週間、下の2つを毎日メモするだけで傾向が見えます。
- 今日 楽しい/楽だった行動
- 今日 嫌だった/重かった行動
👉 ポジティブな反応が多い領域は「やりたいこと候補」。
③ 経験の棚卸し:過去の“ハマった体験”から逆算する
人が何かにハマるときには共通する「性質(パターン)」があります。
質問例
- これまで「夢中になった瞬間」はいつ?
- そのときの共通点は?(創造性?競争?協力?分析?)
- 何をしているときに時間を忘れた?
👉 「やりたいこと=対象」ではなく
→ “夢中になるパターン”が分かれば、対象は後からいくらでも変えられる。
④ 価値観から絞る:自分が大切にしていることを言語化する
やりたいことは、あなたの価値観と一致していないと長続きしません。
価値観発掘の質問
- 何に怒りを感じる?
- 何に感動する?
- 人からどう褒められると一番嬉しい?
- お金が無限にあったら、何を増やしたい?
👉 価値観は行動の“北極星”。
一致しないやりたいことは努力しても続きません。
⑤ 小さく試す:思考で探さず「実験」で探す
やりたいことの正体は「やってみないとわからない」です。
3日ルールの実験
- 3日だけやってみる
- 1時間だけ触れる
- お金を使わずに試す
行動すれば、思考では得られない clarity(明確さ)が手に入ります。
👉 やりたいことは「書く」より「やる」ことで明確になる。
⑥ 外部からの反応を利用する:他者の視点はヒントの宝庫
自分では当たり前すぎて気づかない「強み」が他者には価値に見えることがあります。
確認方法
- 友人に「私がよく語ってるテーマって何?」と聞く
- SNSにアウトプットして反応を見る
- 人から頼まれる作業をリスト化する
👉 他者の反応は、やりたいことの“灯台”になる。
やりたいことは「見つける」より「育てる」もの
多くの人が「完璧なやりたいこと」を探していますが、実際は次の流れが正解です:
①興味の種を拾う ②小さく試す ③続くものだけ残す ④価値観や強みと重なるものが“やりたいこと”になる
種 → 苗 → 木 → 森のように育っていくイメージです。
やりたいことが変わるのは普通?
むしろ“やりたいことが変わる”のは、人が成長している証拠でもあるよ。
ここでは、あなたのモデルを使わずに、一般的な心理学・発達の観点でわかりやすく説明するね。
1. 経験が増えるから
新しい経験をすると、前は見えなかった選択肢が見えるようになる。
すると自然に興味の方向も変わっていく。
例:
本を読んで新しい分野を知る → 面白そう → 今までの興味が薄れる
これは“好奇心が広がった”だけだから、悪いことではまったくない。
2. 自分に対する理解が深まるから
年齢や経験とともに「自分は何が好きで、何が苦手か」がはっきりしてくる。
その結果、前に抱いていた憧れよりも“より本質的に合うもの”に興味が移る。
これは“自己理解が進んだ”という自然な変化。
3. 環境が変わるから
職場・人間関係・生活リズムが変わると、求められる役割や気持ちも変わる。
それに伴って、やりたいことも変化する。
4. 時間軸の違う欲求が競合するから
人は複数の欲求を同時に持っている。
- 長期的に満たしたい欲求(成長・キャリア)
- 短期的に満たしたい欲求(安心・楽しさ・休息)
その時々でどちらが強くなるかが違うので、興味の方向も揺れ動く。
5. 「本気になった証拠」として揺れることもある
ある程度頑張ってきた頃に
「このままでいいのかな?」
と疑問が出てくるのは、真剣に向き合っている証でもある。
やめたい時というのは、実は成長期だったりする。
やりたいことが変わるのは悪いこと?
全然悪くない。ごく自然。
むしろ固定されているほうが珍しい。
大事なのは、「変わらないこと」ではなく、
変わっていく中に“自分らしい軸”を見つけていくこと。
もし不安なら、こんな視点が役立つ
・変わるのではなく“更新されている”だけ
スマホのOSがアップデートされるように、あなたの興味も更新されているだけ。
・過去のやりたいことはムダにならない
昔の興味は、その後の選択の“足場”になっている。
専門性も人間関係も思考パターンも、ぜんぶ繋がる。
・「一生ひとつ」じゃなくていい
これからはマルチキャリアの時代。
一つの興味に縛られる必要はない。
まとめ(安心してほしいポイント)
- 興味は成長とともに変わるのが普通
- 経験・自己理解・環境が変われば、やりたいことも自然に動く
- 揺れるのは「本気で考えている」証拠
- 大事なのは、“変化の中の自分の軸”を見つけていくこと