目次
はじめに
結論から言うと、「現状維持は存在しない」という考え方には大きな真理があります。
理論的な視点から見ると
1. 時間の不可逆性
時間は常に前へ進むため、「同じ状態にとどまる」ということ自体が物理的にも心理的にも不可能です。
たとえば:
- 体は老化し、細胞は日々入れ替わっている。
- 環境や社会は変化し続けている。
- 自分の知識・感情・関係も変化している。
つまり、何もしない=「変化に対応しない」ことで、相対的に後退していることになります。
2. 心理学的視点
人間の脳には「慣れ(順応)」の性質があります。
幸福感・モチベーション・スキルなどは、維持するために努力が必要です。
- 運動をやめれば筋肉が衰える。
- 学びをやめれば知識が薄れる。
- 関係を放置すれば距離が生まれる。
このように、「現状維持」は実際には緩やかな下降を意味することが多いです。
3. 成長と退化の連続性
多くの成長モデル(心理学・ビジネス・教育など)では、
- 成長(+)
- 停滞(実質的な−)
- 退化(−)
の3段階ではなく、「成長」と「退化」の二項対立として捉えます。
なぜなら、環境変化のスピードが速い現代では、停滞=置いていかれることを意味するからです。
哲学的な言い換え
「現状維持を選ぶ者は、静かに後退しているだけである。」
ある意味、人生は常に上り坂か下り坂しかない。
努力や変化を選ばないことも、実は「変化を放棄する」という形の選択です。
補足:とはいえ「穏やかな現状維持」は存在する
ただし、「現状維持を意識的に選ぶ」ことは別です。
たとえば、
- 自分にとってちょうどよいペースを守る
- 安定した生活基盤を維持する
- 成長よりも幸福のバランスを取る
これらは「停滞」ではなく、持続可能な安定(Sustainable Stability)です。
つまり、「惰性による維持」は後退だが、「意志的な維持」は成熟」といえます。