目次
はじめに
勉強の正しい自己観とは?
勉強における自己観とは、
「勉強をしている自分をどのように理解し、価値づけているか」
という自己に対する認識や感覚です。
これは一枚岩ではなく、いくつかの層が重なって成り立っています。
1. 自己効力感(Self-efficacy)
- 意味:「私はこの課題をやり遂げられる」という実行可能感覚(Bandura)
- 正しい在り方:
- 成功体験の積み重ねや「できた理由の内在化」で育てる
- 「根拠のない自信」ではなく、「工夫すれば乗り越えられる」という現実的な見通し
- 誤った自己観:
- 「自分はどうせ無理だ」と挑戦前に諦める
- また逆に「必ずできる」と根拠なく思い込み、失敗すると大きく崩れる
2. アイデンティティ観(学習者としての自己同一化)
- 意味:「勉強する人=自分」というセルフイメージ
- 正しい在り方:
- 「勉強は自分の一部」という自然な自己定義
- 勉強が義務や外部圧力ではなく、アイデンティティに内在化されている状態
- 誤った自己観:
- 「自分は本来勉強するタイプじゃない」と外在化してしまう
- 勉強をアイデンティティのすべてと同一化してしまい、失敗=自己否定になる
3. 自尊感情(Self-esteem)
- 意味:「成果や他人の評価と切り離して、自分の存在に価値を見いだせる感覚」
- 正しい在り方:
- 点数や成績に左右されず、「学び続ける自分」に肯定感を持てる
- 「できてもできなくても、自分は価値ある存在」という基盤がある
- 誤った自己観:
- 成績や評価が高いときだけ自分を認められる
- 成果が出ないと「自分はダメだ」と存在価値ごと揺らぐ
4. 比較と基準の持ち方
- 正しい在り方:
- 「昨日の自分との比較」で成長を測る
- 学習は「競争」より「進歩」
- 誤った自己観:
- 他人との比較を自己評価の中心にしてしまう
- 勉強が「勝ち負け」のみで意味づけられる
5. システム的自己観(6システムモデルとの接続)
- 勉強の自己観は Belief(信念システム) に属し、他のシステムを左右する。
- Motivation:効力感があるほど挑戦意欲が高まる
- Behavior:学習行動が自然に続く
- Environment:自分を学習者と捉えるから、学びやすい環境を選ぶ
- 「自分は学べる」「学んでよい」「学ぶのが自分らしい」という認識が、全体の基盤になる
まとめ
勉強の正しい自己観とは、
- 効力感:「工夫すれば乗り越えられる」
- アイデンティティ観:「勉強することが自分らしい」
- 自尊感情:「できてもできなくても価値がある」
- 比較の基準:「他人ではなく昨日の自分」
- システム観:「勉強は全体的な自己成長プロセス」
を備えた、自分への健全な認識です。