目次
はじめに
「同一化的動機(Identified Motivation)」は 自己決定理論(Self-Determination Theory, Deci & Ryan) における外的動機づけの一種ですが、非常に「内発的動機に近い」特徴を持っています。
同一化的動機とは?
- 定義 外から与えられた価値や目標を「自分の大切なこと」として同一化し、納得して取り入れた動機。 つまり「やらされている」ではなく「やることに意味がある」と思えている状態です。
- 位置づけ(自己決定理論の連続体)
- 外的調整(完全に外部依存:やらされる)
- 取り入れ的調整(評価や罪悪感による:やらないと不安)
- 同一化的調整(自分の目標に関連付けて納得:やる意味を理解)
- 統合的調整(自分の価値観やアイデンティティに統合:やることが自然)
- 内発的動機(純粋に楽しいからやる)
同一化的動機は、この中で 「外的 → 内発的」の橋渡し役 です。
学習における具体例
- 「数学を勉強するのはテストのため」 → 外的調整
- 「サボると親に怒られるから」 → 取り入れ的調整
- 「将来エンジニアになりたいから数学を理解しておきたい」 → ✅ 同一化的動機
- 「理系として問題解決が好きだから数学は自分の一部」 → 統合的調整
同一化的動機を強化する方法
- 将来像とのリンクづけ
- 「この勉強は将来〇〇になりたい自分に必要」と言語化する。
- 例:「英語を勉強する → 海外で働きたい自分に役立つ」
- 自己決定感を持たせる
- 自分で選んだ教材・学習方法を取り入れる。
- 他人からの指示ではなく「自分で選んだ」と思えると強化される。
- 内面化のステップ化
- 最初は「資格が必要だから」でもOK。
- そこから「資格取得 → キャリア構築 → 自分の理想像につながる」と再フレーミングしていく。
- 意味づけの習慣化
- 定期的に「なぜこれを学ぶのか?」を紙に書く。
- 学習日記に「今日の勉強が将来どう役立つか」を一行加える。
ポイント
- 同一化的動機が育つと、外的報酬がなくても続けやすい。
- 「意味がある」と思えると、やる気が安定しやすい。
- ただし「まだ自分の一部」まではいっていないので、油断すると「外的動機」に逆戻りしやすい。